表紙はステファン・マレーと公私ともに仲良し(?)なリンダ・エヴァンジェリスタ(Linda Evangelista)の、これでもか!というくらいなビッチな表情を採用し、かなりのドでかいインパクト!当時はどんなトップモデルも、ショーに行ったらステファンを探してメイクしてもらうというくらい、我がままちゃん達からも信頼は厚く、かなり慕われているなと思わせるエピソードです。リンダやナオミも我がままで有名ですが、ステファンの前では可愛い子猫ちゃんになっていたはず。
右のクリスティ・ターリントン(Christy Turlington)は背景と同系色のリップカラーを塗られ、極上のエレガンスを漂わせてクラシック。ポラロイドでの撮影なので被写体と近過ぎると肌色が飛び過ぎてしまうんだけど、このクリスティの写真はハイライト部が綺麗に飛んでてコントラストも美しい。目もとのブラウンのグラデもさりげなくって好き。
個人的に大好きなリンダのおかっぱ時代。左も右も両方リンダなんですけど、ステファンのメイクでまるで別人に。変身能力が高いリンダだから特に表情までもがガラリと変わって、別人度がハンパないです。右のは1997年にジョン・ガリアーノがディオールのデザイナーになって初めてのコレクションをやった時の服で、ショーの時のヘアーと違うので、ニック・ナイト撮影のDIORの広告の時のスナップだと思われます。20年代調のチークの入れ方にしてアイシャドウも眉頭までしっかり入れて、意思の強さも表現するあたり、バランス感覚が素晴らしいです。
左のメーガン・ダグラスは、間違っていなければ1995年4月号のWマガジンでマイケル・トンプソン(Michael Thompson)が撮影したときのメイクだったと思う。幾何学的なラインを取り入れたメイクと、いつもラグジュアリーなメイクを表現するマイケル・トンプソンの写真との意外性のあるコラボレーションで、結構度肝を抜かれた記憶あり。あんまりメーガンの顔は好きなほうではないんだけど、メイクとヘアー攻撃力と、それに負けていないメーガンの眼差しにやられました。
右のシャローム・ハーロウ(Shalom Harlow)は、、、いつのメイクか微妙にわからないんだけど、もしかしたらハーパース・バサーでディオールのクチュールをシャロームに着せて、ピーター・リンドバーグが撮った時のものかも?ステファン・マレーって時にダイナミックにラインや顔の凹凸を無視したメイクをする場合があるんだけど、それがどれを見ても極上のグラデだったり、悔しいくらいに計算されつくした質感の合わせだったり、見れば見る程、ため息まじり。このシャロームも目もとを大胆にしたので、口元にいっさい色を入れずにマットな肌色にして存在を消しているのがクールです!
左のデヴォン青木は、髪型から想定してハーパース・バザーのカバーでパトリック・デマルシェリエ(Patrick Demarchelier)が撮影した時のもののような気がします。日系の彼女は他の欧米モデルに比べてのっぺりした顔立ちをしているので、ペイント的な手法にして面白みを出してパーツの個性を引き出しているように思えます。デヴォンって唇が極小なので、こういった濃いレッドを乗せると、さらにおちょぼ口になって芸者みたいで面白い。
右のシャローム・ハーロウは、上の目もとを真っ黒に塗られたメイクとは真逆で、程よくシャドウを入れられた、ミニマムなメイクでお品が宜しい感じ。シャロームはもともと頬骨からアゴのラインが彫刻なみに美しいので、少しのシャドウで立体感が生まれるのですが、ノーカラーで質感だけ整えたお陰で、すこぶるクリーンで神秘的。気品に満ちあふれています。
SPURなどでステファン・マレーのメイク術はよく掲載されていたし、資生堂クレド・ポーのカラークリエイターとして長い間契約をしていたので、昔から凄くファンなのですが、どういうシチュエーションでどういうメイクをしても、エレガンス漂う仕上げにするのは彼の意識してないけど出てしまう良い部分な気がします。
東京コレクションでギャルソンをメイクするために来日していた際に、偶然渋谷パルコの本屋さんで出会った事があるのですが、話しかけたら凄く親切に対応してくれて今でも忘れられない思いでです。
20年程前のステファン・マレーと女王リンダ。
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